建築士としてのキャリアには、
いくつもの選択肢があります。
設計事務所に勤務して経験を積む人、
企業に勤め続ける人、
そしてある日独立を決断する人。
また、中には家業を継いで2代目社長として舵を取る立場になる方もいます。
今回は、「独立して事務所を立ち上げた建築士」と
「家業を継いだ2代目社長建築士」の
2つの立場に焦点を当て、それぞれのリアルな実情と課題を掘り下げます。
1. 独立した建築士:自由の裏にある責任と不安
独立した建築士の魅力は、なんといっても
「自分の設計を自由に追求できる」ことです。
クライアントとの直接のやりとり、
デザインの自由度、
スケジュールの自己管理、
こうした自由は、組織ではなかなか得られないものです。
しかし、現実は甘くありません。
独立初期は営業、経理、法務、設計すべてを
一人でこなさなければなりません。
仕事の獲得が不安定な時期が続き、設計よりも
「どうやって家賃を払うか」が、
主な関心ごとになることも珍しくありません。
課題:
• 顧客開拓の難しさ
• 経営知識の必要性
• 信用構築に時間がかかる
それでも、
自分の理想を実現できる場があるという点で、
大きなやりがいを感じる人が多いのも事実です。
2. 2代目社長建築士:背負うものの重さと変革のチャンス
一方、家業を継ぐ2代目社長としてのキャリアは、
まったく異なる景色を持っています。
すでにある程度の顧客基盤とスタッフが整っており、
ゼロからの営業活動は少ないかもしれません。
しかし、そこには
「先代からの信頼・文化・やり方」が
根強く残っていることが多いのです。
「変えたい」と「守りたい」の狭間で
新しい技術やデザインを取り入れたくても、
「昔ながらのやり方」が壁になることもあります。
また、スタッフとの関係性にも微妙な緊張感が生まれがちです。
2代目には、経営者としてのスキルはもちろん、
「社内政治」のような能力も求められる場面があります。
課題:
• 先代との価値観の違い
• 社員との信頼関係構築
• 事業継承と革新のバランス
とはいえ、すでに築かれたブランド力を活かしながら、
自分の色を出していけるという強みも大きな魅力です。
3. どちらが「正解」なのか?
建築士としてのキャリアに正解はありません。
独立したからこそ見える課題もあれば、
家業を継ぐからこそのプレッシャーもあります。
大切なのは、自分の性格や価値観、
ライフスタイルに合った選択をすることです。
どちらの道でも、
建築に対する熱意と顧客との誠実な関係づくりが求められます。
まとめ
独立して一から事務所を立ち上げた建築士と、
2代目社長として組織を背負う建築士。
どちらも簡単な道ではありません。
しかし、それぞれにしか見えない世界と可能性があります。
これから建築士としてのキャリアを考えている方にとって、
この2つのパターンを知ることは、
自身の将来像を描くうえで大きなヒントになるはずです。